小学校受験であっても、中学受験であっても、我が子がその学校から合格をいただいた瞬間、学校と子どもは結ばれ、そして同時に、子どものみならず、ご両親もその学校の「世界」の中に組み込まれていくのです。こういう図式は、公立校の世界観の中には存在しません。
私立校の世界とは、在校生のみならず、在校生の保護者、毎年輩出される卒業生、卒業生の保護者達・・・この膨大な数の「その学校、縁(ゆかり)の人」によって積み重ねられた「学校の伝統と校風」です。
わかり易く言えば、我が子の合格と同時に、両親もその学校の大きな輪、大きなファミリーの中に入り、子どもと共にその学校の「看板」を背負うのです。親には制服こそありませんが、○○小学校のお父様、〇〇のパパ、△△中学校のお母様、というような呼ばれ方をし、世の中からも一種独特の目で見られます。その目は、好奇の目であり、興味の目であり、時には羨望の目でもあるでしょう。
中学受験の場合には、すでに子どもが12歳という年齢であり、親が学校に出向くことは小学校と比較すれば極端に少なくなります。ですから、あまりそういう「世界観」や世間からの「目」を実感する機会は少ないでしょうが、私立小学校の場合には、きっと「親も学校の大家族の一員」ということを肌で感じるチャンスは多いことと思います。
こういう私立小学校(一貫校の場合には、小学校に限らず、学校全体)の世界観が理解できれば、小学校受験の考査が「子どもの知育的要素」だけで選抜されるものである、とは思わなくなるでしょう。私立小学校と家庭とは、子どもの考査の結果だけではなく、学校とご家庭とのフィット感によって結ばれるものです。
つまり、小学校受験は、学校と子ども、学校と家庭、この2本立て、2本柱、なのですね。
さまざまな子どもが受ける考査、たとえばペーパー、個別試験、グループ行動、運動、絵画、制作、等々を通じて、子どもが「どれだけの聞く力があるか?」「どれだけの理解力を持っているか?」「どれだけの表現力があるか?」「どれほど努力のできる子どもか?」「根気はあるか?」「協調性はあるか?」「真面目か?」「集中力はあるか?」等々、子どもの多方面での力が見られ、同時にその子の人柄、思考に基づく行動等を検証します。
保護者の中には、「そんな短時間で、子どもの多くのことが見抜けるわけがない」と猜疑心でいっぱいの方も多いでしょうが・・・やはり、子どもの「素顔」は随所にあらわれるもの、ですよ。子どもは、大人が思っているほど「装えない」もの。よほど子役として訓練を受けた名子役以外は、ああしなさい、こうしなさい、という「猫をかぶせる行為」は通用しません。
こんな時にはこうしなさい!こんな時にはこう言いなさい!とノウハウを仕込まれたとしても、咄嗟の場合、自分の行動や思考に熱中した場合などには、まさその子の「素顔」が見え、「素」の行動をとるものです。そして何よりその「素」は、5年、6年の長い家庭生活の中で自然に身に備わったものですから、1年や2年、教えこまれた通りには振る舞えません。
また、そう振る舞う意味とは何なんでしょう?この「子どもの素・子どものありのまま」が1本目の柱、です。
そして、2本目の柱は「家庭環境や両親の教育観による学校とのフィット感」です。
学校側がご家庭に課す願書やアンケートによって、各家庭のあり方、ご両親の考え方等を事前にチェックし、その子の成長に大きく影響を及ぼす「家庭環境」を考証します。それを確かめるために、実際に両親や子どもに会い、面接として直接に親子に触れ、話し、その家庭をご覧になります。
幼児教室マナーズ代表(神奈川県横浜市港北区日吉本町 1-23-9 タケノビル3階) 1958年生まれ。大阪府堺市出身。 幼児教室マナーズホームページに南坊先生の詳しいプロフィールが掲載されています。ぜひご覧下さい。 |
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